婦人科・腫瘍科

良性疾患

子宮筋腫

子宮筋腫は女性の4人に1人が罹患するといわれており、主な症状は過多月経、過長月経、月経痛、圧迫症状などがあります。妊娠希望の女性の中には子宮筋腫が不妊の原因になっていることもあります。また、妊娠時の合併症を考え摘出が必要な場合もあります。手術治療としては、子宮筋腫のみを切除する子宮筋腫核出術と子宮を摘出する子宮全摘術がありますが、患者さんの希望に応じて術式を決め、可能な限り低侵襲性で整容性にすぐれている腹腔鏡下手術を行っています。

卵巣腫瘍

良性卵巣腫瘍には漿液性嚢胞腺腫、粘液性嚢胞腺腫、奇形腫、チョコレート嚢腫などの卵巣腫瘍があります。MRIや採血などで精査し良性卵巣腫瘍と判断した場合は巨大卵巣腫瘍などを除き、できるだけ腹腔鏡下手術を行うようにしています。卵巣腫瘍の手術には腫瘍のみ摘出する腫瘍摘出術と付属器(卵巣卵管)を摘出する付属器摘出がありますが、患者さんの希望やライフステージに応じて適切な治療を提案しています。

子宮内膜症

本来は子宮の内側に存在する子宮内膜が子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患です。卵巣に発生した内膜症はチョコレート嚢腫、子宮の筋肉に発生した場合は子宮腺筋症、子宮と直腸の間や子宮の靭帯にできた場合を骨盤子宮内膜症と呼びます。主な症状は月経痛や月経時以外の下腹部痛、腰痛、排便痛、性交痛などがあり、不妊の原因にもなります。年齢や妊娠希望の有無によって薬物療法や手術療法など適切な治療法を患者さんと相談し決めています。

悪性疾患

婦人科腫瘍専門医・日本産科婦人科内視鏡技術認定医を中心に初期がんから進行がんまで全ての婦人科がんに対する治療を行っています。

RASH(ロボット支援下子宮全摘術)

2018年4月よりロボット支援下子宮全摘術とロボット支援下子宮悪性腫瘍手術(子宮体がんに限る)が保険適応になりました。最新技術を搭載した手術支援ロボット(ダヴィンチ)を使用した手術ですが、当科でも2021年3月よりロボット支援下子宮全摘術を開始しました。ロボット支援下手術は腹腔鏡下手術のひとつで執刀医がロボット(ダヴィンチ)をコントロールしながら手術を行います。

進行婦人科がん治療

当院では外科系の外科、泌尿器科、形成外科に加え、腫瘍内科、放射線治療科、放射線診断科、精神科等によるバックアップ体制が充実していますので、進行した卵巣がんおよび子宮体がんに対する拡大手術、また進行外陰がんに対しては広汎外陰切除および形成外科医による植皮術などにも対応しています。また当院には放射線治療装置が備わっており子宮頸がんに対する広汎子宮全摘出術に加え、進行子宮頸がんに対しての放射線または化学療法との同時併用療法も行っています。術前・術後の化学療法および緩和医療につきましては腫瘍内科医、精神腫瘍医と連携をとりながら治療にあたっています。当院の特徴としまして、全科が協力的ですので婦人科腫瘍専門医のみならず全科を挙げて婦人科がん治療に取り組んでいます。

婦人科悪性腫瘍における治療方針

子宮体がん

妊よう性(妊娠するための力)温存を希望する場合:子宮内膜異型増殖症または子宮内膜に限局した組織型が類内膜がんGrade1の場合に限り、子宮を温存した黄体ホルモン療法を考慮できます。

一般的な治療方針
進行期ⅠA期および組織型が類内膜がんGrade1またはGrade2

ロボット支援下子宮全摘出術もしくは腹腔鏡下子宮全摘出術、両側付属器(卵巣・卵管)摘出術、(場合により後腹膜リンパ節郭清術:初期の場合リンパ節郭清の省略も考慮)

進行期ⅠB期以上、または組織型が類内膜がんGrade3か類内膜がん以外

開腹手術に加え化学療法

進行期Ⅳ期

化学療法を先に行い、手術による利益があると判断した場合に子宮全摘出術、両側付属器摘出術を考慮

子宮頸がん

妊よう性温存を希望する場合:進行期がⅠA1期までであれば子宮頸部円錐切除術を行い妊よう性温存を考慮します。

一般的な治療方針
ⅠA1期

単純子宮全摘出術

ⅠA2期

準広汎子宮全摘出術および骨盤リンパ節郭清術

ⅠB期

広汎子宮全摘出術を行い、深い間質浸潤またはリンパ節転移を認める場合、化学療法、放射線療法、またはその両方による追加治療を検討

Ⅱ期

手術療法、化学療法、または放射線療法の組み合わせによる治療

Ⅲ期

同時化学放射線療法

Ⅳ期

化学療法を中心とした治療(手術による利益があると判断した場合手術との組み合わせも考慮)

卵巣がん

妊よう性温存を希望する場合:進行期ⅠA期、かつ組織型が漿液性がん、類内膜がん、粘液性がんの場合は患側の付属器摘出術と大網切除、詳細な腹腔内観察を行い、妊よう性を温存することを考慮します。また、組織型が胚細胞腫瘍の場合は進行期に関わらず希望の場合妊よう性温存手術を行います。

一般的な治療方針

基本術式は腹式子宮全摘出術、両側付属器摘出術、大網切除術で必要な場合後腹膜リンパ節郭清術を行います。上記手術療法に加え、術後(進行がんの場合、術前・術後)に化学療法を必要とすることが多いです。

化学療法が省略できるのは卵巣がんのⅠA・ⅠB期かつgrade1、または卵巣境界悪性腫瘍の場合です。

外陰がん

手術方針は進行期により単純または広汎外陰切除術、必要に応じ鼠経リンパ節郭清術を行います。切除範囲が広い場合には、当院形成外科により皮弁術または植皮術を用いた外陰部再建術を行います。進行症例では術後に放射線療法を行うことがあります。

遺伝性疾患

遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)はがん関連遺伝子のBRCA1あるいはBRCA2の遺伝子に変異があることで、乳がんや卵巣がんに罹患しやすくなる症候群です。HBOCと診断された場合、定期的な検診(サーベイランス)を受ける選択肢もありますが、卵巣がんに関しては有効なサーベイランスがないともいわれており、予防的に卵管と卵巣を切除するリスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)も選択肢の一つです。当院はHBOCの遺伝学的検査、カウンセリング、リスク低減手術を行える道内では数少ない施設のひとつです。

診療実績(婦人科腫瘍科・婦人科生殖内分泌科)

2017年 2018年 2019年 2020年 2021年
腹腔鏡下手術(悪性含む) 166 211 249 269 292
ロボット支援下手術 31
進行がん手術 29 36 27 32 35
開腹良性手術 29 31 50 35 24
円錐切除術・レーザー手術 25 34 34 61 76
子宮鏡下手術・その他 111 98 123 151 175
合計 360 410 483 548 633

担当医師

婦人科・腫瘍科に所属している医師を紹介しています。