斗南病院呼吸器外科・乳腺外科では、2名の専門医(日本呼吸器外科学会呼吸器外科専門医かつ日本乳癌学会乳腺専門医)がエビデンスに基づいた医療を提供しています。
診療にあたっては、呼吸器内科、腫瘍内科、放射線科、外科・消化器外科と討論を行った後に治療方針を決定しています。
呼吸器外科
原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍(胸腺腫など)、気胸、膿胸、胸壁腫瘍、胸腔内生検、悪性胸膜中皮腫などの呼吸器外科(胸部外科)疾患に対し、手術療法を提供しています。胸の中(胸腔)は狭く、重要臓器がつまっており、高度な技術が要求されます。当科では、安全・確実な手術を第一に心がけ、第二に可能な限り傷を小さくし、からだに優しい治療を目指しています。患者さんが最も心配していることの一つとして、手術後の傷の痛みがありますが、当科では硬膜外麻酔に加え、肋間神経ブロックを併用することで、痛みの緩和につとめています。一般的な手術前後の経過、入院期間は3~7日程度です。
胸部外科手術前の経過、入院期間
外来
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手術前日
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手術日
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術後1日目以降
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術後2日目以降
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外来(術後2週間程度)
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主な手術方法には以下のものがあります。それぞれに適応があり、患者さんに合わせて適切な手術方法をご提示します。
1.ロボット支援下手術(RATS)
da Vinci Xiという手術用ロボットを使用して手術する方法です。本邦では2018年春より保険診療が開始され、現在年間約4000例の呼吸器外科手術がロボットで行われています。胸に数箇所穴を開けて手術するという点で、2の胸腔鏡下手術(VATS)と同様ですが、ロボット手術ではより精細かつ立体的に見える3Dカメラが使用できること、人の関節より手術器具の可動域が大きいこと、手ぶれが軽減されることから、従来より正確な手術を行うことができます。現在、肺悪性腫瘍手術(原発性肺癌、転移性肺腫瘍)、縦隔腫瘍手術について、RATSを第一選択としています。
ロボット支援下手術(RATS)
2.胸腔鏡下手術(VATS)
胸に1~数カ所穴を開けて、細長い器具(鉗子)を挿入し、胸腔鏡というカメラを使って体内をモニターで覗きながら手術します。呼吸器外科の手術では、最も一般的な方法です。
胸に1~3つの穴を開け、カメラでのぞきながら手術します。
胸腔鏡下手術(VATS)
3.開胸手術
胸を大きく切り、肋骨の間を大きく開いて行う手術方法です。腫瘍が大きく小さい傷では取り出せない場合、周りの臓器に広がっている場合、手術中に大出血が起こった場合などに行います。1や2では難しい患者さんが適応になります。
それ以外にも、当院にはハイブリッド手術室が設置されており、触れることのできない肺腫瘍も小さな傷で確実に切除可能です。縦隔腫瘍についても、ロボット支援下手術あるいは胸腔鏡下手術を標準として実施しています。腫瘍の大きさや場所によっては、安全に切除するために開胸手術を行うこともあります。
ハイブリッド手術室での非接触肺腫瘍切除
ハイブリッド手術室での非接触肺腫瘍切除
手術中にCTのような写真を撮影し、リアルタイムに肺腫瘍を見つけます(左)、当科で考案したスタンプ法(中、右)を併用することで、より確実に病変の切除が可能です。
胸腔鏡下、縦隔腫瘍切除術
乳腺外科
当科では主に乳がん扱っていますが、その他良性乳腺疾患(良性腫瘍、乳腺炎など)も同様に診療しています。
乳がんの手術は乳房の手術と腋窩リンパ節の手術を組み合わせて行われます。オンコプラスティックサージェリー(がんの根治性と整容性の両立を目指す乳房手術の考え方)を積極的に取り入れることで、乳がんの根治性とともに整容性を保った手術を行っています。オンコプラスティックサージェリーの例として、乳房温存手術が可能な場合は、瘢痕収縮(術後に傷が縮んで硬くなること)を防止するためにwave like incision(波状の皮膚切開。手術73:1659-1666、2019)、乳房温存手術ができない場合においては三角法(脇を三角形に切り取り、皮膚が余るのを防止。Oncol Br J 4:39-44、2019)などを取り入れ、患者さんの満足度の高い手術を提供しています。また、造影超音波検査を併用した病変部位の同定、センチネルリンパ節生検による腋窩リンパ節郭清の省略など、患者さんにやさしい手術を心がけています。当院形成外科と連携し、各種乳房再建術(人工物や自家組織による再建、さらには乳頭乳輪再建など)を施行しています。
乳がんの局所治療(手術、放射線照射)
乳房の手術
- 乳房切除術(±再建)
- 乳房温存術(放射線照射が必須)
腋窩リンパ節の手術
- 腋窩郭清(全部取る)
- センチネルリンパ節生検
- 腋窩手術なし(非浸潤癌)
乳がんの手術療法(乳房の手術)
乳房切除術(Bt)
- 適応:すべての乳がん症例
- 大胸筋にがんが浸潤している場合は、一部を合併切除する
- 希望により、同時再建(エキスパンダー留置)も可能
乳房温存術(Bp)
- 適応:本人が希望し、手術後の整容性が得られる症例
- 腫瘤の大きさ、場所に一定の基準はない
- 特別な場合を除き、術後に残存乳房に対し放射線照射を行う
乳がんの手術(腋窩の手術)
腋窩郭清
- 適応:リンパ節転移が疑われる症例
- 術前治療でリンパ節転移が消えても基本的には郭清する
センチネルリンパ節生検
- 適応:リンパ節転移がないと思われる症例
- センチネルリンパ節転移陽性なら、基本的には腋窩郭清を行う
乳房温存手術ができない場合
- しこりの大きさが、乳房に比べ大きい場合
- 2つ以上のしこりが同じ側の乳房の離れた場所にある場合
- 乳がんによる石灰化が広範囲に人がっている場合
- 手術の後に放射線治療が行えない場合※
- 美容的な仕上がりが良くないことが予想される場合
- 患者さんが希望しない場合
※妊娠中、放射線療法を行う体位がとれない、過去同じ場所に放射線療法を行ったことがある、強皮症や全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病を合併
センチネル(門番)リンパ節生検
がん細胞がリンパ管を通り最初に流れ着くリンパ節をセンチネルリンパ節と呼ぶ センチネルリンパ節生検で転移陰性他のリンパ節への転移している可能性はほとんどないので、腋窩郭清を省略できる。上肢の機能障害や浮腫の低減 センチネルリンパ節生検で転移陽性他に転移している可能性があるため、通常の郭清を行う。 ※微小転移(転移巣が2mm未満)1個であれば、郭清を省略可能 |
乳房温存手術後は、放射線治療が必須ですが、当院に放射線治療科が新設されたことで、一貫した治療を受けることができます。
近年、免疫チェックポイント阻害薬や、分子標的薬など、従来の抗がん剤とは作用機序とは異なる薬剤が続々と用いられるようになり、患者さんに最新かつ有効な薬剤を選択することが求められています。術前、術後薬物療法が必要な患者さんに対しては、当院腫瘍内科と連携し、最新のエビデンスに基づいた治療を受けることが可能です。
また、遺伝性乳がん卵巣がん症候群についても大きな話題になっております。生まれつきがん関連遺伝子BRCA1/2に変異があると乳がん・卵巣がんを発症しやすくなり、そのような場合を遺伝性乳がん卵巣がん症候群といいます。現在、一定の条件を満たす方のBRCA1/2遺伝子検査は保険適応になっています。検査の結果、遺伝性乳がん卵巣がん症候群と診断された場合、定期的な検診をしっかりと受け続けるなどの対策がありますが、リスク低減手術という選択肢もあります。乳がんの場合は予防的に乳房を切除する「リスク低減乳房切除術」、卵巣がんの場合は予防的に卵管と卵巣を切除する「リスク低減卵管卵巣摘出術」を行います。当院は、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の遺伝学的検査、カウンセリング、リスク低減手術、経過観察を行うことのできる道内では数少ない施設のひとつです。検査結果を参考に、各種ガイドラインに則りながら、リスク低減手術などについてのご説明させていただきます。メリット、デメリットを考慮しながらいずれの場合も、医師が実施を推奨するものではなく、患者さん自身が自らの意思で実施の選択をしていただくことが重要になります。納得のいくまでお話させていただきますので、ご安心ください。
乳がんは他のがんと同様に、早期発見が重要です。当院には健診センターがあり、無症状の方の乳がん検診を施行しています。現在、乳がん健診は視触診を省略し、マンモグラフィや超音波検査による画像診断を主としていますが、症状がある方は乳腺外科外来を受診して頂き、通常の外来診療で診断・治療を行います。
診断、治療の過程を通じて、診断部門、看護部門、検診部門、事務部門などとのチーム医療を推進し、メディカルスタッフの教育も行っています。
一般的な乳癌手術前後の経過は下記の通りです。合併症がなければ、入院期間は5~7日程度です。
乳がん手術前後の経過、入院期間
外来
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手術前日
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手術日
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術後1日目以降
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術後2日目以降
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外来(術後2週間程度)
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担当医師
乳腺・呼吸器外科に所属している医師を紹介しています。