婦人科内視鏡下手術

内視鏡手術のご案内

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当院生殖内分泌科・婦人科では腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術、卵管鏡下手術に日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医、日本生殖医学会生殖医療専門医、日本婦人科腫瘍学会腫瘍専門医を含むチームで積極的に取り組んでおり、2012年4月から婦人科内視鏡手術専門外来を開設しました。

専門外来は日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医が担当します。外来日は外来予定表をご覧ください。

当院では同一施設内で、一般不妊治療から体外受精、筋腫核出術、卵管形成術から悪性腫瘍手術などの手術療法まで様々な治療を行うことができる公的病院の特徴を生かして患者さんご夫婦とゆっくりと話し合い、治療方針について決定しています。

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婦人科・生殖内分泌科における最近の婦人科内視鏡下手術数

また、子宮全摘出術などの婦人科手術も可能な限り、開腹手術に比べて美容性に優れ、短期間で回復できる腹腔鏡下手術で行っています。

当院で内視鏡下手術を希望される患者さんだけでなく、ご相談のみの患者さんも是非ご利用ください。

受診のご予約、お問い合わせは、月、火、水、金曜日15時00分~16時30分に、木曜日14時30分~16時30分に婦人科外来(直通電話:011-231-2319)でお願いします。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡下手術は、麻酔下に10mmの臍切開部からカメラを挿入しておなかの中を観察し、下腹部2~3箇所の5~10mm切開部から挿入した鉗子を操作して、病巣を切除する手術です。

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腹腔鏡下手術の利点

  1. 術後の痛みが少なく、回復も早いこと
  2. 美容的に優れていること
  3. 腹腔内の術後癒着が少ないことなどがあげられます。

開腹手術の傷

腹腔鏡下手術の傷

卵巣腫瘍手術、卵管形成術、子宮筋腫核出術をはじめ、出産経験がなく膣が狭いため開腹して摘出する必要があった子宮も腹腔鏡下に摘出が可能ですが、疾患の状態によっては初めから開腹手術を選択、あるいは癒着が強固な場合などには術中に開腹手術に移行する必要がある場合もあります。

当院では不妊治療も積極的に行っており、術後に妊娠の可能性を損なわないように細心の注意をはらっております。

腹腔鏡下手術は腹腔内の術後癒着が少ないため不妊治療にも有用です。

腹腔鏡下子宮外妊娠手術

卵管を切除する方法と、卵管を温存して子宮外妊娠の病巣のみを摘出する方法があります。卵管を温存した場合、卵管が再開通する事もありますが、同じ場所に再度子宮外妊娠を繰返すことがあります。

子宮外妊娠の位置、腹腔内出血の量によっては始めから開腹手術を選択することもあります。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡下卵管開口術・形成術・端々吻合術

卵管周囲の癒着をはがして、卵管開口術・形成術を行います。

卵管内に液体が貯留した卵管水腫の場合には卵管の機能が損なわれ、さらに子宮腔内に貯留液が流入して着床の妨げとなることがあるため、卵管を切除あるいは卵管を切断する事があります。

卵管結紮後に再度妊娠を目指す場合や卵管内腔が閉塞し、卵管鏡下手術で形成困難な場合に閉塞部の卵管を切除して、再吻合することで再開通させる方法もあります。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡による骨盤内の観察

原因が明らかでない不妊症の場合には腹腔鏡で骨盤内の観察を行うことがあります。

卵管通過性の有無、子宮内膜症の有無、卵巣・卵管周囲の癒着の有無などを観察し、異常があればそのまま内視鏡下での治療を行いますが、骨盤内の状況によっては体外受精へのステップアップをお薦めすることもあります。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡下多嚢胞性卵巣多孔術

多嚢胞性卵巣が原因で排卵障害がある場合に、卵巣表面の嚢胞を焼くことで排卵障害の治療を行う方法です。

排卵誘発剤を使用する方法と比較して、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群が起こる可能性が少なくなる利点があります。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡下子宮筋腫核出術

腹腔鏡で腹腔内を観察しながら、筋腫のみ切除する手術です。腹腔内で筋腫をくり抜いて、約1cmの腹部切開創から、筋腫を細かくして取り出します。

多数の筋腫がある場合や筋腫のサイズが大きい場合には開腹手術の適応になることがあります。

いずれの方法でも術後に妊娠中の子宮破裂がおこる可能性を考慮して、原則として術後約6か月間、避妊することが必要です。また、分娩は帝王切開が必要となります。

入院期間 約7日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡下子宮全摘出術

腹腔鏡下に手術操作を行い、子宮を摘出することが可能です。腹腔内で子宮を摘出して、約1cmの腹部切開創から、子宮を細かくして取り出します。

個人差はありますが、開腹や膣式手術と比較して術後の痛みが少ないことが多いです。

入院期間 約7日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 2週間程度

腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術

手術前の検査で良性腫瘍の可能性が高い場合に、正常卵巣を残して腫瘍のみ取り除く手術です。当科では基本的に良性卵巣腫瘍の手術は腹腔鏡で行っています。

卵巣腫瘍をくり抜き、腫瘍内溶液を吸引して、腫瘍を小さくして、小さな腹部切開創から腫瘍を体外へ取り出します。

当院では卵巣腫瘍を正常卵巣から剥がす際には、可能な限り正常部分を残して卵巣機能を温存できるように努めています。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

腹腔鏡下附属器摘出術

附属器とは卵管と卵巣の総称ですが、これらの部位に良性の可能性が高い腫瘍があるときに卵管と卵巣を切除する手術です。

当院では通常、附属器の血管処理を行う際には超音波メスなど、最新の手術器具を使用しています。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

単孔式腹腔鏡下手術

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通常の腹腔鏡下手術でも十分に低侵襲ですが、さらなる低侵襲な手術を目指して2009年3月より全国に先駆けて、おへその窪みの中を切開して、1ヶ所の傷からカメラと複数の鉗子を挿入して腹腔鏡下手術を行う単孔式腹腔鏡下手術を導入し、これまでに400例以上の単孔式手術を施行しています。

通常のおへそ1ヶ所と下腹部2~3ヶ所を切開する方法と比較して、術後の傷がおへその窪みの中に隠れてしまうので術後の傷を目立たなくしたい患者さんに有用です。

すべての疾患に適応があるものではありませんので、手術適応については外来担当医にご相談ください。

子宮鏡下手術

子宮鏡下手術はおなかを切らずに経膣的に子宮の中に細い内視鏡を挿入し、子宮腔内に液体を流しながら視野を確保して鉗子を操作し治療する手術です。

子宮の内腔に向って発育した粘膜下筋腫や内膜ポリープの切除や子宮奇形、子宮腔癒着症の治療が可能です。

不妊症と子宮内隆起病変について

当院では2004年1月~12月の1年間で116例の不妊症例に子宮鏡検査を行い、51例(44.0%)に子宮内腔病変が認められました。子宮内腔病変があるにもかかわらず無治療で経過観察した27例の妊娠率は33.3%で、子宮内腔病変がなかった65例の妊娠率56.9%と比較して有意に低下していました。

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不妊症でいろいろな検査をしてもなかなか妊娠しない患者さんの中には超音波検査や子宮卵管造影検査では診断できないほど小さな子宮内腔病変があることがあるため、当院では不妊症に対しては全例子宮鏡検査を行い、異常があれば治療を行っています。

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当院における最近の子宮鏡下手術数(術式別)

子宮鏡下粘膜下筋腫核出術

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子宮の内腔に向って発育した粘膜下筋腫は過多月経、月経痛および着床障害の大きな要因のひとつです。子宮鏡下手術ではおなかを切らずに粘膜下筋腫を切除でき、術後も原則として経膣分娩が可能です。当院では術式の工夫により子宮内にあまり突出していない粘膜下筋腫も子宮鏡下に摘出が可能です。

入院期間 3日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 2~3日間

子宮鏡下内膜ポリープ切除術

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子宮内膜ポリープの切除は子宮内に器具を挿入して、手探りで正常内膜とともに切除する方法が一般的ですが、術後に子宮内の癒着や子宮内膜が薄くなるなどの偶発症がおこる可能性があります。

当科では子宮鏡で観察しながら、ポリープを付着部からピンポイントで細径子宮鏡の鋏鉗子や最新式の子宮内シェーバーで切除しています。ポリープ付着部より深部の正常子宮内膜への影響を最小限にすることで術後早期の妊娠が可能と考えています。

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細径子宮鏡

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シェーバー

入院期間 2日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 2~3日間

子宮鏡下子宮中隔切除術

当院では手術中に子宮中隔切除の状況を客観的に評価する目的に、手術中に子宮腔に造影剤を注入して、子宮中隔切除の程度をリアルタイムにX線で透視観察できる装置を使用しております。

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子宮中隔の術中子宮腔造影

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術中造影用撮影装置SXT-6-1

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術中造影用撮影装置GE OEC9900ELITE

術中の子宮穿孔の有無を確認する目的に腹腔鏡を併用して行うこともあります。なお、術後には子宮腔癒着の予防処置を行うことが好ましいと考えており、患者さんの子宮内腔の形状に合わせて作成したシリコンプレートを用いて、癒着予防をしています。

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Order made Silicone plate

これまでに当院で子宮鏡下中隔切除を行った不育症患者さんの生児獲得率は72.7%でした。

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逸見博文 第2回日本子宮鏡下手術研究会で発表(2018年)

入院期間 6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間

子宮鏡下子宮腔癒着剥離術

当院では手術中に子宮腔癒着剥離の状況を客観的に評価する目的に、手術中に子宮腔に造影剤を注入して、剥離の程度をリアルタイムにX線で透視観察できる装置を使用しております。

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これまでに当院で子宮鏡下癒着剥離術を行った患者さんの70人中56人(80.0%)が再癒着なく、正常子宮腔に戻りました。

入院期間 3日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 2~3日間

卵管鏡下手術

卵管周囲の癒着あるいは、卵管内腔の閉塞のために卵管閉塞があると不妊の原因になりますが、腹腔鏡下に卵管の周囲の癒着剥離を行なう事ができます。卵管内腔の癒着が原因の場合は卵管の中に外径1.2mmの伸張性バルーンカテーテルを通し、障害のある部位を広く開通させる卵管鏡下卵管形成術を行います。

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カテーテルの内側に組み込んだ外径0.6mmの微細な卵管鏡により卵管内腔の状態を観察することで、卵管不妊の治療選択を決定する上で有用な情報が得られる可能性があります。

入院期間 約6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間程度

手術は基本的に腹腔鏡を併用して、形成後に卵管が通過したことを確認します。卵管采や腹腔内の状態を確認、癒着、内膜症などあれば可能な範囲で改善をはかりますが、クラミジア既往、子宮内膜症、開腹、腹腔鏡手術既往などがなければ、腹腔内に癒着、内膜症が存在する可能性は低いため、腹腔鏡施行を省略して手術を施行する選択もあります。

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その場合には腹腔鏡で形成した卵管が通過したことを確認できないので、術中造影を施行して形成した卵管が通過したことを確認します。

入院期間 約2~3日
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1週間

卵管鏡下卵管形成術は、健康保険の適応となります。

逸見博文 第40回日本受精着床学会で発表(2022)

子宮・卵巣周囲癒着率

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卵巣采周囲癒着率

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卵巣以外に表在性内膜症を確認した症例

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治療成績

一般に手術により80%以上の卵管通過性回復を認めますが、術後1~3ヶ月後に約10%の症例で再閉塞することもあります。

治療後の妊娠成功率は、文献的には治療後2年以上経過した症例の検討で約30%に妊娠が成立し、妊娠成立までの期間は平均7.8ヶ月、妊娠例の87%が治療後1年以内の妊娠であることから、術後1年経過しても妊娠しない場合には体外受精などの治療への移行が必要なこともあります。

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逸見博文 第61回北海道生殖医学会で発表(2019)

入院期間 6日間
通常の生活に戻るまでの自宅療養期間 1~2週間