不妊症診療

主な診療内容

定期的な性交渉をもち、避妊していないにもかかわらず、1年以上妊娠成立しないカップルには何らかの妊娠しない原因があるかもしれません。

1年未満でも高齢の場合や自覚できる症状(たとえば生理が不順など)があれば、不妊検査が必要な場合があります。

性別による不妊原因の比率は、女性原因のみ41%、男性原因のみ24%、男女に原因あり24%、原因不明11%と男性側にも約半数の原因があるといわれていますので、ご夫婦で検査を受けることをおすすめしております。

不妊症の検査

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月経5日前後
  • ホルモン検査(FSH,LH,E2)
  • 前胞状卵胞検査
月経終了後
  • 子官卵管造影
  • 子官鏡検査
排卵期
  • 卵胞超音波検査
  • 子官内膜厚検査
  • 頸管粘液検査
  • 尿中LH検査
  • フーナーテスト
排卵後7日目前後
  • 黄体機能検査(E2,P4)
  • 排卵確認検査

随時進行する必須検査

  • 基礎体温測定
  • プロラクチン
  • 甲状腺機能検査
  • 糖尿病検査(空腹時血糖値、HbA1c)
  • 精液検査
  • クラミジア抗体検査
  • B型肝炎
  • C型肝炎
  • 梅毒検査
  • 血圧
  • 身長
  • 体重測定

必要に応じて施行する検査

  • HOMA値
  • adiponectin
  • androstendione
  • testosterone
  • DHEA-S
  • AMH
  • 抗精子抗体
  • HIV検査
  • 風疹抗体

基礎体温

朝、目をさましたら体を動かす前に婦人体温計を舌の下にいれ体温を測定します。一度さがってからあがった日が排卵日と昔から言われていましたが、最近はそのようなことではなく、低温層の最後の日の前後2日間の計4日間の間で排卵するということがわかってきました。ですから自分であらかじめ排卵日を察知することはなかなか難しいです。

尿中のLHというホルモンを自分で簡単に測ることができますから、それだと排卵日を予測することができます。

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尿中LH検査

卵巣予備能検査

月経5日目前後にエコーで胞状卵胞数検査、および採血で卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)エストラジオール(E2)値を調べます。卵巣の手術既往や加齢に伴い、卵巣機能が低下します。必要に応じて、感度の高い抗ミューラー管ホルモン(AMH)を調べることもあります。

子宮卵管造影

月経直後に子宮の出口から子宮腔内へ造影剤を入れ、子宮腔内に異常がないかどうか、卵管が通過しているかどうかを診断します。痛い検査と患者さんのあいだで言われているようですが、油性の造影剤を用い、ちょっとしたコツで痛みを軽減して検査できます。検査の翌日にも単純撮影をして造影剤の拡散をみます。

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正常

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右卵管閉塞

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卵管水腫

子宮鏡検査

子宮の中に細い内視鏡を挿入し、子宮腔にポリープや粘膜下筋腫などの異常がないかをみる検査です。非常に細いので麻酔なしでも痛みはほとんどありません。

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また、最近では慢性子宮内膜炎と着床不全の関連について着目されており、慢性子宮内膜炎に特徴的な所見を認めた場合には子宮内フローラなどの精密検査や薬物治療、内視鏡下手術を行います。

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マイクロポリープ

頚管粘液検査

子宮の出口の部分を頚管といい、いつも粘液が分泌されています。排卵が近づくと量が増え、粘調性が低下し糸を引くようになります。このような時期に精子は奥に入って行きやすいのですが、排卵が近づいてもなかなか粘液がこのような性状にならない人がいます。排卵の時期に頚管粘液の性状をみる検査です 。

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頚管粘液

フーナーテスト

朝方に性交後、膣内にあった精子が十分に子宮腔に入っていけているかどうか、つまり頚管粘液と精子の適合性がよいかどうかをみます。一回で合格しなくても大丈夫。3回くらいチャレンジして判定します。排卵期の性交ですのでこれで妊娠できることもあります。

超音波検査(卵胞、子宮内膜検査)

生理中には小さくてみえなかった卵胞が、排卵が近づいてくると卵巣の中に卵胞が育ってくるのがみえます。卵はその卵胞の壁のどこかにくっついています。直径約1.8cmになると卵胞が破裂し卵がとびだしてきます。これが排卵ですが、きちんと卵胞が育っているかどうかを経膣超音波で観察する検査です。

また、排卵時期の子宮内膜が薄いと妊娠しづらく事があるため、内膜菲薄化がないか同時に検査します。

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卵胞

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子官内膜

血糖値測定

耐糖能が低下すると、多嚢胞性卵巣などの排卵障害の原因になることがあります。さらに低下した場合には児の先天異常を引き起こす事もあり、妊娠前に耐糖能を改善させる必要があります。

血中ホルモン測定

甲状腺ホルモン、プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)に異常があると排卵障害の原因になったり、妊娠しても流産を反復することがあるので、妊娠前に治療する必要があります。

精液検査

精液中に十分精子がいるかどうかをみます。病院で採取していただいてもけっこうですし、自宅で採取し約2時間以内に病院にもってきていただければ検査できます。2日以上7日以内の禁欲期間が必要です。

WHOマニュアル2010による正常下限値

精液量 1.5ml
総精子数 39×106
製紙濃度 15×106/ml
総運動率(前進+非前進) 40%
前進運動率 32%
生存精子率 58%
正常形態数 4%
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抗精子抗体

まれに精子に対する抗体ができていて、精子を攻撃してしまい、妊娠できない場合があります。採血して血液中の抗精子抗体を調べます。

クラミジア検査

あまりはっきりした症状は出てこないこともあるのですが、卵管に炎症を起こし知らないうちに卵管がつまってしまうことがあります。クラミジア抗体検査(IgA, IgG)は卵管病変を予測する検査として重要です。

黄体機能検査

排卵後に形成される黄体機能に異常があると、着床の妨げ、流産の原因となることがあります。基礎体温の高温相が10日以下(あるいは12日未満)、黄体期中期の血中黄体ホルモン(P4)値が10ng/ml未満の場合、黄体機能不全である可能性があります。

以上のような検査をすすめて異常があれば治療していくことになりますが、当院では黄体機能不全がある患者さんにビタミンC内服が有用であると考えています。

<H HENMI. Ascorbic acid for luteal phase defect. Fertil Steril 2003>
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一般不妊治療

タイミング法

排卵が近づくと卵巣の中に卵胞が腫れてきます。1.8cm以上になったらもうすぐ排卵です。卵胞の大きさから排卵が近いかどうかを見て妊娠しやすい時期を指導することをタイミング法といいます。尿検査で排卵が近いかどうかをみることもできます。排卵が近づくと透明なおりもの(頚管粘液)が増えて自分でもある程度予測できることもあります。

排卵誘発剤による治療

排卵に問題がある場合には卵巣機能に合わせた排卵誘発剤を選択し、治療します。排卵誘発剤にはセキソビッド、クロミッド、フェマーラなどの内服剤や、hMG/FSH製剤などの注射薬があります。

排卵誘発剤以外のホルモン療法、薬物療法

黄体機能不全、つまり排卵した後の黄体ホルモンの分泌が悪いような場合、ビタミン剤や黄体ホルモンを補充することがあります。

プロラクチンが高い場合下げる薬(カベルゴリン、テルロン、カバサールなど)の服用が必要になります。

甲状腺機能や耐糖能異常がある場合にも、妊娠前に薬物療法が必要な場合があります。

AIH(配偶者間人工授精)

予測した排卵日に洗浄・濃縮した精液を子宮腔内に注入する方法です。子宮頚管を飛び越えて子宮腔内へ精子を注入しますので、多くの精子が卵管の先まで到達できます。

頚管粘液が良くない場合、フーナーテストで成績が悪い場合、性交渉がうまくできない場合や精子が少ない場合におこないます。 不妊原因がはっきりしない場合にもAIHをおこなうことがあります。

通薬水(通水)

卵管の通過性が悪いときに子宮の出口から奥へ水を通す方法です。排卵の直前におこなうようにしています。

卵管形成術

卵管の通過性が悪くて妊娠できない場合、卵管形成術をおこなうことがあります。腹腔鏡、あるいは卵管鏡(FTカテーテル)でおこなうことがあります。

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卵管水腫がある場合には、治療成績が低下するので体外受精を選択した方がよい場合もあります。

当院の卵管鏡下卵管形成術後自然妊娠率・出産率・子宮外妊娠率

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子宮筋腫核出術

子宮筋腫が子宮内腔を変形させているなど、妊娠の妨げになっていると判断される場合、手術で筋腫を除去します。粘膜下筋腫はお腹を切らずに子宮鏡で核出する事もできますが、子宮鏡で核出困難な筋腫は腹腔鏡、あるいは開腹手術で核出します。

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子宮鏡下粘膜下筋腫核出術

腹腔鏡で行う骨盤内観察

おへその縁を2cmほど切ってお腹の中に内視鏡を入れ、卵管、卵巣、子宮の状態をみる検査です。手術的な検査ですので日常的にはしませんが、卵管の通過性に疑問がある場合や、明らかな不妊原因がないのに、なかなか妊娠しない原因不明不妊などの場合に行ないます。

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子宮卵管造影検査は優れた検査法ですが、腹腔鏡の結果と比較すると、両者の一致率は約60%にすぎないという報告もあります。

腹腔鏡は子宮内膜症焼灼、卵管周囲癒着剥離、多嚢胞性卵巣多孔術などの治療を兼ねておこなうこともあります。

担当医師

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