プログラムの概要

令和6年度 斗南病院初期臨床研修プログラムの概要(プログラム責任者:北城秀司)

経験する研修から自立可能な研修へ

これまでの研修は、必須項目を経験することで終了判定が可能でした。新しいプログラムでは、様々な診断並びに治療が自立できなければ判定終了となりません。2年間の研修終了後には、地域診療で初診の外来を担当可能となるよう教育いたします。それには、日常診療で遭遇する、29の症候と26の疾病をしっかり学ぶことによりプライマリー・ケアの基本診療能力が身につきます。また研修の過程で、医師として強い使命感と責任感を養い、医師である前に人間であるための人格育成を行っていきたいと思います。

当院の特徴は各専門科の特徴を生かした高度急性期医療の実践でありますが、その基本はあくまで患者中心の医療であり、各科の強い連携を基盤に行なわれている総合的医療の研修が身近に受けられることを特徴としています。

研修プログラム

斗南病院臨床研修管理委員会は定められた指針に則り、その応用に向け質の高い研修が受けられるようプログラムを構成した。

1年目研修で29の症候と26の疾病と臨床手技を学びます。同時にそれぞれの治療が実行可能な手技を習得いたします。2年目研修では、地域での外来診療での実践に加え、北海道大学病院や札幌医科大学附属病院、旭川医科大学付属病院などでの専門性の高い教育を受けることが可能です。

プログラムの特徴として1年次の早期に、ショック対応(血管確保・気道確保・人工呼吸器の設定など)を学び、その後の研修で経験値が積みあがるようにプログラムしております。一般外来に関しても、地域医療、小児科、脳神経外科、当院の外科や内科系の複数診療科で経験可能な体制となっている。

29の症候

  • ショック
  • 体重減少・るい痩
  • 発疹
  • 黄疸
  • 発熱
  • もの忘れ
  • 頭痛
  • めまい
  • 意識障害・ 失神
  • けいれん発作
  • 視力障害
  • 胸痛
  • 心停止
  • 呼吸困難
  • 吐血・喀血
  • 下血・血便
  • 嘔 気・嘔吐
  • 腹痛
  • 便通異常(下痢・便秘)
  • 熱傷・外傷
  • 腰・背部痛
  • 関節痛
  • 運動麻痺・筋力低下
  • 排尿障害(尿失禁・排尿困難)
  • 興奮・せん妄
  • 抑うつ
  • 成長・発達の障害
  • 妊娠・出産
  • 終末期の症候

26の疾病

  • 脳血管障害
  • 認知症
  • 急性冠症候群
  • 心不全
  • 大動脈瘤
  • 高血圧
  • 肺癌
  • 肺炎
  • 急性上 気道炎
  • 気管支喘息
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 急性胃腸炎
  • 胃癌
  • 消化性潰瘍
  • 肝炎・ 肝硬変
  • 胆石症
  • 大腸癌
  • 腎盂腎炎
  • 尿路結石
  • 腎不全
  • 高エネルギー外傷・骨折
  • 糖 尿病
  • 脂質異常症
  • うつ病
  • 統合失調症
  • 依存症(ニコチン・アルコール・薬物・病的賭博)

臨床手技

  1. 気道確保
  2. 人工呼吸
  3. 胸骨圧迫
  4. 圧迫止血法
  5. 包帯法
  6. 採血法(静脈血動脈血)
  7. 注射法(皮内、皮下、筋肉、点滴、静脈確保、中心静脈確保)
  8. 腰椎穿刺
  9. 穿刺法(胸腔、腹腔)
  10. 導尿法
  11. ドレーン・チューブ類の管理
  12. 胃管の挿入と管理
  13. 局所麻酔法
  14. 創部消毒とガーゼ交換
  15. 簡単な切開・排膿
  16. 皮膚縫合
  17. 軽度の外傷・熱傷の処置
  18. 気管挿管
  19. 除細動等

教育に関するシステム

各科の指導医による29の症候と26の疾病のセミナーを実臨床に即したロールプレー式に講義します。また、臨床手技においてもハンズオンの後に臨床で実践いたします。各科ローテーション時に、密着指導によるベッドサイドレクチャー、症例検討会、症例発表などを通じ、幅広い基本的知識、技能を養います。また、毎月定期で研修医ヒアリングを開催し、セミナー内容や必要な教材等研修に関する要望を積極的に取り入れ、プログラムの拡充を図ります。

救急研修は麻酔科、整形外科、外科、脳神経外科において、命を助けるための救急対応が確実に行えるよう十分な期間と教育システムが確立されている。その実践の場として平日の救急車の受入を指導医とともに担当します。加えて、けが災害一次救急(2日/月)、消化器二次救急(2日/月)、循環器救急(1日/月)、呼吸器救急(1日/月)、泌尿器二次救急(1日/月)で研修する。また、札幌市ACSネットワークに属し循環器救急疾患患者の迅速な救急病院搬入を行っています。

必須選択科目の院外研修として、小児科では小児症例が豊富でNICUが完備された天使病院やKKR札幌医療センター、精神科は発達障害などを多数経験可能な五稜会病院、産科は出産数が豊富な札幌東豊病院、脳神経外科と神経内科は全国でも有数の症例数を誇る中村記念病院などで研修可能です。

研修参加施設

基幹型臨床研修施設 国家公務員共済組合連合会 斗南病院
協力型臨床研修指定病院
  • 医療法人社団 五稜会病院(精神科)
  • 医療法人育愛会 札幌東豊病院 (産科)
  • 社会医療法人母恋 天使病院 (小児科)
  • KKR札幌医療センター(小児科)
  • 北海道大学病院(選択科)
  • 札幌医科大学附属病院(選択科)
  • 旭川医科大学病院(選択科)
  • 中村記念病院(脳神経外科・神経内科)
  • 余市協会病院(地域医療)
  • 栗山赤十字病院(地域医療)

プログラムの修了の認定

毎月開催される臨床研修管理委員会及び、6カ月毎に開催されるプログラム委員会においてプログラムの履修状況を確認します。達成度に応じて個々に新たなプログラムを作成いたします。2年修了時には、29の症候と26の疾病において診断治療の自立が可能なことを確認して研修修了を認定し、認定証明書を発行します。

研修終了後の進路

臨床研修修了後、本院で後期臨床研修プログラムのもとで勤務を続けることができます。

また大学との強い連携が構築されており、大学院入学、研究志向の要望には随時対応できます。

初期臨床研修プログラム冊子

年次報告

令和4年度