研修科の概要

消化器内科

消化器内科においての初期研修は、担当医と一緒に多くの患者さんに接するところから始まります。患者さんの症状を把握し、その病態を一緒に考え、その上で治療方針をエビデンスに基づいて決定するプロセスを理解していきます。一方で初診の患者さんの診察を通して救急処置の必要性を判断する能力を身につけていくことを目標としています。また実際に担当医あるいは指導医のもとでさまざまな診療手技を実施することでその確実性と安全性を高めていきます。一通りの診察が可能となるようまで指導医、担当医が共に診療にあたります。

後期研修には、消化器病全般の診断、治療に積極的に携わりつつ、さらに専門的視野を備えた医師を育成することを目的としています。特に、消化管の早期癌の治療については、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が普及してきていますが、当院ではESDを2000年から精力的に行っており、胃癌に対するESDは累計2000件を超え北海道では最多です。2021年は咽頭、食道および胃ESDを177件、大腸ESDを115件施行しました。

当院での昨年の上部消化管および大腸内視鏡検査の総数は13041件(上部9819件、大腸3212件)であり、後期研修医は内視鏡検査に積極的に関わってもらいます。内視鏡治療が可能な早期癌の発見や、治療を行う病変に対しての拡大内視鏡観察等の内視鏡トレーニングを行い、実際にEMRやESDといった手技に触れる機会を設け、習得を目指します。

肝、胆、膵領域は、現在のエビデンスに基づいた診断、治療を学ぶことを目標としています。後期研修では、様々な病態に対応する知識を整理して、ERCPのほかEUS(超音波内視鏡検査)やEUS-FNA(穿刺細胞組織診)、interventional EUSなど多岐にわたる手技を習得します。2021年はERCP 220件、EUS 270件、EUS-FNA 125件、interventional EUS 14件を施行しました。年々施行件数は増加しており、2021年は最多の件数を施行しております。

消化器の進行癌に対する化学療法については、腫瘍内科と協力して施行しています。エビデンスに基づいた最新の化学療法について学習するとともに、担当医の指導の下に実際に患者さんへの治療にも携わっていきます。化学療法は主に外来で行われることが多く、そのため外来化学療法センターが設置されています。また院内には緩和ケアチームが設けられ、緩和医療についても学ぶことができます。

いずれの分野においても、臨床研修に止まらず希望者には学会発表、論文作成の機会もあります。学会発表については、初期研修では主に北海道地方会での、後期研修では地方会に加えて全国学会での発表を行っており、指導医のもとで学術的な活動にも参加することができます。当院は、日本消化器病学会、日本消化器内視鏡学会の指導研修施設であり、学会専門医を取得する際には研修歴に算定できます。

腫瘍内科

研修医の皆さん、腫瘍内科なんて特殊すぎて初期研修には向かないと思っていませんか?それは大きな間違いです。現在は日本人の3人に1人、近い将来には2人に1人ががんで死亡するといわれており、がん治療は医師にとって重要な分野です。また、がん患者さんは進行するにつれていろいろな合併症をかかえることになり、精神的にも肉体的にも苦しんでいます。そのような患者さんをサポートする過程で、結果的に内科で研修するべき項目は全てクリアできます。以下を参考にして、ぜひご検討下さい。

腫瘍内科は消化器がん、肺がん、乳がん、婦人科がんなど固形がん全般に対する薬物治療を専門にする診療科です。当科では外来治療や短期入院に重きをおいて、医師、看護師、薬剤師がチームを作り、クリティカル・パスを活用した標準治療からup to dateな情報を基にした最新の治療、そして終末期まで視野に入れたトータルなケアを提供しています。また当科では、世界的な標準治療の確立を目指しWJOG(西日本臨床腫瘍機構)やHGCSG(北海道消化器癌化学療法研究会)などの臨床試験に積極的に参加しています。当科での質の高いがん治療は製薬企業の評価するところでもあり、抗がん薬や支持療法薬の新薬の治験や企業主導の臨床試験も行っています。

当院では2004年4月に腫瘍内科を新設し、院内のがん治療に関するリスクマネジメント、チーム医療の実践、がんに関する知識の普及に力を入れてきました。術後補助化学療法、転移・再発がんに対する治療件数は年間約6000件、その内約4000件を外来で行っており、283床規模の病院としては極めて多いといえます。さらに2016年10月に新病院に移転、放射線治療が可能となり、外来治療センターのベッドも14床から20床に拡充しました。ソフト面ばかりでなくハード面も充実し、最善のがん治療を提供できる環境が整ったと自負しています。

当院は日本臨床腫瘍学会の認定する研修施設に認定されており、化学療法センター長辻靖、科長本間理央は日本臨床腫瘍学会指導医、医長高山歳三は同学会の専門医で後進の指導にあたっています。日本の大多数の施設では、診療科は臓器別に分かれており、診療科毎に良性腫瘍から悪性腫瘍の診断から治療まで行われているのが現状です。しかし、悪性腫瘍に対する治療薬の開発はめざましく、適切な治療の選択には高度の知識が要求されます。当科ではさまざまな固形がんに対する抗がん薬治療、支持療法、緩和療法などの薬物療法全般について効率よく研修することが可能と考えています。またがん患者さんは、中心静脈ポートの造設の機会や胸腔穿刺・腹腔穿刺などの手技が必要なことも多く、ポート造設術や手技を見学・習得することも可能です。

ぜひ腫瘍内科での研修をご検討ください!

リウマチ・膠原病内科

膠原病・リウマチ性疾患は、同時に多臓器に障害を起こし得る全身性疾患群です。診断においてはいわゆる不明熱の鑑別能力も問われ、また多くの例が慢性疾患で感染症や臓器合併症も多彩なため、初期診断からフォローアップに至るまで常に全身を診る姿勢と、深く考える力が求められます。さらに、治療薬としての副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤、生物学的製剤は様々な副作用や使用上の注意点を有し、使いこなす力が求められます。

このように専門的知識と経験の蓄積のみならず、患者さんを全人的に診るGeneralistの能力が求められる当科は、研修という点では内科医としての基礎から応用、広い知識や臨床能力を養う場として最適でもあります。かつ近年の患者さん数の増加や求められる診療レベルの向上に対し、リウマチ膠原病科の専門医はとくに北海道ではまだまだ不足しており、将来的にも人材が渇望されている領域です。

当科では膠原病診療の最前線で症例を受け持って頂き、専門知識と臨床能力を身につけて頂きます。初期研修では関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病・リウマチ性疾患や合併症の診療を通じ、専門知識のみならず不明熱の鑑別と対応、関節疾患の見方、肺をはじめとする臓器合併症への対応、ステロイド剤や生物学的製剤の使いこなしなど、プライマリ・ケアや他科の診療にも通じる知識・技量の蓄積も課題として研修して頂きます。

また専門医研修ではより専門性を高めた研修を積むとともに、日本リウマチ学会を始めとする学会参加や将来のリウマチ専門医資格取得を目標に研鑽を行います。新専門医制度では当院は北海道大学病院の準認定教育施設等の位置付けとなり、希望者を中心に受け入れることを想定しています。当院では病棟診療を中心とした研修からスタートして頂き、外来診療の実践も経験しながら、リウマチ・膠原病の診療や生物学的製剤などの新規治療法の実践も含め、1例1例を深く診るトレーニングを積んで頂きます。

糖尿病・内分泌内科

当院は札幌駅の徒歩圏内で官庁街や商業地区に隣接する立地条件から、糖尿病外来の需要の高いエリアであり、当科単独で1,700名程度の糖尿病患者さんの外来受診があります。また、市内の医療機関から、甲状腺疾患をはじめ、間脳下垂体疾患、副腎疾患、カルシウム代謝異常症などの内分泌疾患の症例も多くご紹介頂いています。また、消化器内科・腫瘍内科・外科のアクティビティが高い病院ですので、多くの症例の周術期管理や、ステロイド投与による血糖上昇への対応、最近では、免疫チェックポイント阻害剤による免疫関連有害事象への対応もしばしば経験されるところです。

糖尿病患者さんの合併症に対する検査は多岐に亘っており、経験の蓄積が必要です。また、近年の糖尿病薬の進歩は目覚ましく、大規模臨床研究のエビデンスが常に集積されているので知識のアップデートが欠かせません。臨床糖尿病学は専門医が最も必要とされている分野の1つです。当院は日本内科学会認定施設(教育関連病院)であり、当科は日本糖尿病学会認定教育施設、日本内分泌学会内分泌代謝科(内科)認定教育施設、日本甲状腺学会認定専門医施設であります。症例も豊富なため糖尿病内分泌分野の専門医取得に必要な経験と実績を十分に積むことができると考えています。また、興味深い症例については、学会発表や論文投稿も行われています。

診療体制は、2名の常勤医師ならびに後期研修医で月〜金の専門外来を運営し、入院は、1.糖尿病教育入院、2.糖尿病合併症による入院、3.他科術前の血糖管理、4.内分泌疾患の精査・加療が主な内訳です。

初期臨床研修として当科に在籍する場合には、第一に自科の入院患者に最も近いところで接し、糖尿病診療の一般的な流れ(血糖管理、慢性合併症の評価、低血糖・シックデイなどのエマージェンンシー対応など)を経験して頂きます。さらに第二には他科入院中の糖尿病患者の院内往診を経て、周術期の血糖管理などに習熟して頂く。さらに在籍期間に症例に恵まれれば、電解質異常の管理や、下垂体前葉や副腎皮質機能の定量的評価を実際に行い、治療までの流れを経験して頂きます。後期研修の場合は、自身が外来診療を行うなかで、外来診療〜入院適応の有無判断〜入院加療〜アフターケア、とさらに一貫して症例を経験することになります。また、より広範な内分泌疾患を経験できる筈です。

臨床糖尿病学・臨床内分泌学の研鑽をともに積み、学んでいければと考えています。

血液内科

血液内科にて扱う疾患は主として血液悪性腫瘍や各種の血球減少症です。良性の血球減少症としては再生不良性貧血や特発性血小板減少性紫斑病の患者が時折、加療を要して入院してきます。

血液悪性腫瘍は、白血病・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫等があり、治療の主体は化学療法です。化学療法を行うに際しては対象疾患に効果的な治療を選択することとともに、各種の副作用の予防・コントロールを行うことが肝要です。当科においてはこういった感染管理、G-CSFや輸血による血球数コントロールといった支持療法を日常的に行わなくてはなりませんが、これらの管理を習得することは、例え将来的に血液内科を選択しなくとも、臨床を続けていくのであれば、必ず有用となっていくものです。なお、造血幹細胞移植は当科においては自家移植までで同種移植は施行していません。

手技的な面では他の内科ではあまり行われないと思われる骨髄穿刺・生検は当科では頻繁に行います。その他、中心静脈カテーテル留置も比較的多く、さらに腰椎穿刺・抗癌薬の髄腔内投与も時に行います。

循環器内科

近年生活習慣の欧米化に伴い、高血圧、糖尿病、高脂血症などの心血管疾患の危険因子を有する症例が増え、人口の高齢化と相まって循環器疾患の患者数は増加の一途をたどっています。

循環器内科では循環器内科を専門とする常勤医四名体制で診療にあたっています。平日日勤帯と、3か月に2回の札幌市呼吸循環二次当番、月に2回の札幌市ACS当番の際に、循環器救急患者の受け入れを行い、急性心筋梗塞、不安定狭心症、急性心不全、不整脈など多彩な救急疾患の診療を行っています。循環器内科で研修した場合には常勤医がマンツーマンで指導にあたりこれらの救急疾患を幅広く経験することができます。

また健康診断や他科/他院通院中にみつかった循環器疾患の精査加療や、循環器疾患を合併した患者の周術期や入院中の管理などを担当し、心臓超音波検査、運動負荷検査、心血管カテーテル検査/治療、ペースメーカー治療などを行い、労作性狭心症や末梢血管疾患、慢性心不全、不整脈などの検査や治療にあたっています。特に最近進歩が著しい心血管カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術や経皮的末梢血管形成術)を適応に応じて積極的に行っており、低侵襲で治療効果が得られる治療法として症例数も増加しています(過去二年間の冠動脈造影件数は267件、経皮的冠動脈形成術件数は197件、経皮的末梢血管形成術件数は45件、ペースメーカー植え込み術件数は44件)。循環器内科で研修した場合には実際に検査や治療に入り助手として手技を経験し指導を受けることができます。

更に当院では心臓血管外科により開心術も行われており、循環器疾患の治療を当院で完結できるようになり、月に一度のカンファレンスで手術適応を検討し、協力して治療にあたっています。循環器内科で研修した場合カンファレンスに参加し心臓血管外科の先生とディスカッションをすることで手術適応などについても学ぶことができます。

このように循環器内科では、2016年の病院新築移転後より設備や体制が整い、幅広く循環器疾患を経験し、学ぶことができるようになっています。循環器内科での研修により複数の疾患をかかえる患者の診療を経験することで、循環器疾患の治療のみならず、患者の全身的な管理方法を学ぶことができます。また2020年の臨床研修制度の変更に伴い研修期間中に規定された疾病や症候を経験することが必須となりますが、循環器内科で研修することによりその多くを経験することができます。更に当院は日本循環器学会循環器専門医研修施設に指定されており、循環器専門医を取得するための研修が可能です。循環器内科を志す先生は勿論のこと、循環器診療や救急に興味がある先生、冠動脈造影、経皮的冠動脈形成術やペースメーカー植え込み術などの治療手技を身につけたい先生、他の科に進む前に患者の全身管理法を学びたい先生など少しでも興味のある先生は循環器内科での研修を是非ご検討ください。

呼吸器内科

当院の呼吸器内科では、肺癌、COPD、気管支喘息、間質性肺炎、市中肺炎や医療・介護関連肺炎など、呼吸器内科疾患全般の診療を行っています。

当院では一時呼吸器内科の常勤医が不在でしたが、2020年度から常勤医2名体制で診療を再開し、2022年度からは3名に増員されています。日本呼吸器学会関連施設と認定されており、専門医取得のための研修も可能です。設備としても、各種気管支鏡や、呼気NO検査など、呼吸器内科領域で必要となる機器が揃っています。最先端の医療を提供するに十分な環境が整っており、研修医の皆さんにとっても十分な経験が積める環境と思います。

臨床研修では、主に当科入院患者を指導医とともに担当して頂き、疾患の診断・治療などに携わって頂きます。慣れてきたら、指導医のバックアップのもと、担当患者の主治医として、病状説明やインフォームド・コンセント、退院後の療養環境の整備などにも関わっていただき、呼吸器内科領域の知識や手技習得のみならず、医師として必要な様々な経験を積めるよう、サポートしていきたいと思います。

胸部レントゲン・CTの読影については、基本的な読影手順から、個々の病態における読影の応用まで習得することができると思います。胸部画像検査の読影は、どの診療科に進むとしても、色々な場面で役に立ちますので、当科研修中に是非習得して頂きたいところです。手技としては、動脈血液ガス、胸腔穿刺・ドレナージなどが、当科で多く経験するものと思います。気管支鏡検査では、助手から始め、慣れてきたら実際に気管支鏡を持って検査をしてもらおうと考えています。

呼吸器内科の特徴として、救急の現場における急性呼吸不全の対応や急性期の呼吸管理から、感染症の治療、COPDや間質性肺炎などの慢性疾患の管理、肺癌や悪性胸膜中皮腫といった悪性疾患の診断・治療、疾患末期における緩和ケア・終末期医療まで、診療の幅がとても広いことが挙げられます。当院は北海道がん診療連携指定病院、地域医療支援病院といった機能を有する高度急性期病院であり、呼吸器内科領域においても様々な患者さんが来院されます。色々な患者さんと接することで、研修医の皆さんのスキルの幅が広がり、今後の成長の一助になるものと思います。

呼吸器内科を志す先生はもちろん、内科として様々な病態に関わりたい、胸部画像検査の読影に興味がある、他の科に進む前に呼吸器内科領域の基礎を学びたいなど、少しでも興味のある先生は、呼吸器内科での研修を検討してみてください。きっと有意義な研修になると思います。一緒に楽しく学びましょう、お待ちしております。

精神科

当院の精神科は入院コンサルテーションに特化した精神科診療を行っております。精神科リエゾンコンサルテーションはどの診療科を専門としても必要なスキルです。

身体疾患に併存した精神症状に対してどのように対応するかを包括的に学習できるプログラムです。どの診療科でも遭遇する、せん妄、不眠、認知症、抑うつについての診断アセスメントと介入方法について多くの症例を通じて学ぶことができます。特に、現在は緩和ケアチームでの診療を主眼にしており、診断時から人生の最終段階に至るまでのどのステージにおいても、がん、終末期心不全、呼吸不全などの苦痛緩和に必須なスキルを同時に学ぶことができます。当院には、精神疾患を有するがん患者さん、内科疾患、手術を必要とする患者さんが多く入院してくるため初期研修プログラムとして必須となっている統合失調症、気分障害、認知症についてその対応方法について経験することができます。

精神科研修は、医師としてもっとも大切な患者さんだけでなく医療者・家族との良好な信頼関係を構築できるコミュニケーションスキルにとても役立つ研修です。是非とも精神科研修の中で、医師として良好なコミュニケーションスキルを身につけるヒントを感じ取っていってください。

外科

1.理念

北は札幌駅と南は大通り公園の間、北海道庁(赤レンガ)の真ん前に位置する 札幌市中央区の基幹病院の外科として、現時点での最高水準の外科治療を提供することを理念としています。

扱う領域は、消化管、肝胆膵などの消化器疾患、乳腺などの内分泌疾患、肺、縦隔などの呼吸器疾患、またヘルニア・痔核・肥満手術などの一般外科疾患です。特に、食道、胃、大腸などの消化管悪性疾患に対し低侵襲手術として胸腔鏡、腹腔鏡下手術を積極的に導入し、創の小さい、体にやさしい手術を実践し実績をあげています。また、"患者さんや周囲の人たちに信頼される医療を提供すること"、"よく学び、よく遊べ"をモットーとし、 若手医師の教育に力を入れています。

2.スタッフと診療体制

令和4年度現在、スタッフは院長を含め11名で、他に北海道大学消化器外科II・呼吸器外科からの応援医師、また常時、数人の初期研修医が研修中です。

スタッフは、日本外科学会専門医が10名、日本消化器外科専門医8名、呼吸器外科専門医2名、乳腺専門医2名、日本消化器病学会専門医5名に加え食道外科専門医・日本大腸肛門病指導医・日本胆道学会指導医・日本膵臓学会指導医・肝胆膵外科高度技能指導医が常勤しております。また、日本内視鏡外科学会評議員4名で日本内視鏡外科技術認定資格を5名有しています。ロボット支援鏡視下手術認定資格を6名取得してロボット手術にも力を入れています。

入院患者は常にチーム全員で担当し、常時約30~40名の入院患者さんの診療を行います。

3.診療内容

手術症例数は日本・北海道でもトップレベルであり、2021年の全身麻酔手術総数は934件です。食道癌・胃癌・大腸癌・肝胆膵癌などの消化器手術が703件、呼吸器手術が65件、乳腺手術が67件でいずれも北海道で有数の症例数です。

特に内視鏡外科手術を積極的に取り入れており、2021年の手術数は710件で全身麻酔手術の76.0%を内視鏡手術で行っています。

また、週に一度の消化器病カンファレンスでは、外科と消化器内科・腫瘍内科・放射線診断科・放射線治療科・病理医とのミーティングで治療方針が決定されます。全ての科が一体となった診療体制のもと、診断、検査から手術、化学療法への一連の流れを 主治医として担当できます。また放射線科のインターベンション治療専門医の指導の下PTCDなどの検査や治療も十分に経験できます。

4.プログラムとその特色

初期研修のプログラムとしては、初期研修1年目では必修要件の4週以上から選択可能です。外科系を志す者、内科系を志す者に係わらず周術期を中心とした全身管理をベッドサイドで勉強します。病態生理はもちろん補液、経腸栄養などの基礎を学びます。研修早々に本番さながらのトレーニングボックスを用いて形成外科医・外科医による縫合・結紮実習があります。練習を重ねながら毎日のように手術助手、内視鏡手術のスコピストをしていただきます。中心静脈カテーテル挿入講習会を放射線科指導医のもとに習得し臨床実地しております。月に2~3回のけが災害救急は、札幌の中心部にある事から一日に多いときで100名以上の救急患者のプライマリーケア--を指導医のもとに経験できます。救急日においても縫合処置に関しては形成外科医の本格的な縫合手技を研修可能です。地方会での発表はもとより、近隣開業医を交えた月に一度の勉強会において発表いただいております。

初期研修2年目では、上記に加え全国学会発での発表をしていただきます。外科系を志す者には、手術の準備として動物実験などで本番さながらのトレーニングを行い、主に良性疾患(胆嚢摘出術・虫垂切除・ヘルニア根治術など)の全身麻酔手術の執刀いたします。

5.最後に

将来目指す診療科によらず、医師として患者の救急の初期対応が求められております。周術期の全身管理を通してルート確保・気道確保・補液選択・画像診断等の基本手技・知識を取得できるようしっかり指導させていただきます。

外科医を志す者にとっては、1年目で基本的な手技・知識を習得し、2年目では実際の手術の執刀により技術を磨きます。

時に長時間の手術や、重症患者さんの管理などハードな 時間を過ごすこともありますが、手術後に患者や家族から、感謝の言葉を頂いたときに抱く達成感や喜びは何物にも変えがたものがあります。将来どんな科を選択しても、外科研修のひと時は、確実に役立つものと確信しております。夢を持った意欲ある若手医師の応募を期待しています。

心臓血管外科

2020年の人口動態統計によると、日本人の死因の一位は悪性新生物で32%を占めますが、心疾患(高血圧性を除く)+血管疾患(脳血管をふくむ)は27%と高率であり、その治療は重要な分野になっています。これらは動脈硬化を基にする疾患が多く、治療には薬物療法、カテーテル等を使用した血管内治療、外科治療があります。

その外科治療を担うのが心臓血管外科医です。内科的治療と比較して侵襲は大きくなるものの確実性や長期予後などの様々なメリットがある治療を提供できる分野です。当科の対象疾患は冠動脈疾患、心臓弁膜症、大動脈瘤や大動脈解離などですが、特徴として人工心肺を用いた体外循環を補助手段に用いることがあげられます。開心術においては、手術は外科医だけでは成立せず、心臓手術に精通した麻酔科医、人工心肺は臨床工学技士が操作、経験豊富な手術室看護師のチームワークがあってはじめて完遂されます。

研修医の皆さんには、術前の症例検討、手術、術後管理を一緒に行っていただいています。術前の検討では疾患の理解、特徴、重症度、治療法等を学んだのち、手術術式を詳細に検討します。手術では手洗いのうえ第二もしくは第三助手として手術メンバーの一員として活躍してもらいます。心筋保護液での心停止ののち冠循環再開で心臓の拍動が再開すりときの感動も体験できます。術後管理では刻々と変化する呼吸循環病態に対し、身体状況や各種モニターを含めた情報の把握、人工呼吸器や循環作動薬の調整、それらの全身状態に及ぼす効果等が体感できます。

これらの経験から循環器疾患の理解と外科治療の要点を学んでもらえることを期待します。また、心臓血管外科への興味を持っていただければ幸いです。

整形外科

整形外科は運動器官の疾病・外傷を対象とし、その病態の解明と治療法の開発および診療を行う専門領域です。対象は脊椎・脊髄、上肢、下肢など広範囲に及び、内容も多様で治療の必要な患者数が極めて多いのが特徴です。更に高齢社会の加速による頚椎、肩、腰、膝などの変性疾患の急増、スポーツ障害や外傷等の増加ならびに労働災害や交通事故の多発に伴って,今後需要は一層高まると考えられます。

当院の整形外科スタッフは2022年4月現在常勤医師5名(専門別では脊椎外科2名、肩関節・一般整形1名、下肢1名,整形外科後期研修医1名)と、非常勤医師4名(北大脊柱,下肢,関連病院上肢,股関節専門医)です。常勤および非常勤スタッフは当院、北大整形外科や北大基幹病院にて研修医指導を担当してきております。当科は北大整形外科の基幹関連病院の一つであり、北大や同門関連病院でのカンファレンス参加・手術見学なども可能です。昨年度も当科で研修した研修医が北大整形外科に1名入局しております。

初期研修1年目では選択的に4週間~整形外科(救急医療)にローテーションし、2年目では選択科として、最大48週間研修可能です。当科在籍時は入院患者さんを指導医と受け持ち、運動器疾患症例の診断から治療までの流れを経験して頂きます。更にプライマリーケアとして救急外来等での初期対応・治療や専門医への適切な相談ができる事を目指します。

また、当科は北海道大学および大学関連病院との交流も盛んですので、専門研修プログラムとして札幌中心部にある当院を拠点とし特徴ある疾患などについては近隣の病院での発展的な研修も可能です。臨床医に必要な基礎的な知識・手技・臨床能力を身につけ、良質の医療を提供できる整形外科医となるべく、上肢・下肢・脊椎疾患の治療をバランス良くかつ高度なレベルを目指して経験し習得して頂きます。さらに学会発表・論文作成も行い,世界で通用する整形外科医となる事を目標としています。

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

耳鼻咽喉科における後期研修では、耳鼻咽喉科・頭頸部外科疾患に関して、専門的な能力を有する指導医の下で豊富な症例を経験し、優れた臨床能力をもつ医師を養成することを目的としています。

特に当科では一般耳鼻咽喉科疾患から頭頸部癌症例まで幅広い疾患に対応しており、頭頸部外科領域では癌に対する遊離皮弁による再建を含む拡大手術症例から、臓器温存を目指す縮小手術、放射線化学療法など、各種治療が実施され、耳下腺、顎下腺、甲状腺などの良性腫瘍に対する手術も多数行っています。

一般的な耳鼻咽喉科疾患では、慢性副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎や滲出性中耳炎、反復性扁桃炎、声帯ポリープ、音声改善手術や嚥下改善手術などの手術も積極的に行っており、扁桃炎・扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎、突発性難聴、末梢性めまい、顔面神経麻痺など、急性炎症や耳鼻科救急疾患の入院治療も多数経験できます。

現在スタッフは、耳鼻咽喉科2名、頭頸部外科2名の計4名(耳鼻咽喉科専門医3名常勤)ですが、実際の臨床現場では垣根なく幅広く診療にあたっており、研修施設の認定も受けていて、充分な指導を受けることが可能です。3年間の研修では多くの手術の術者、ないしは助手が可能で、専門医取得に必要な手術症例を経験できます。

耳鼻咽喉科が扱う領域には、悪性腫瘍だけではなく一般的な耳鼻科疾患も含め、呼吸や嚥下などのほか、聞く、話す、嗅ぐ、味わうなど、単に生命を維持するのみならず、コミュニケーションやQOLにかかわる疾患、病態が多数含まれ、非常に興味深くやりがいのある分野です。ぜひ我々の仲間に加わる新しい力を待っています。

婦人科・生殖内分泌科

婦人科・生殖内分泌科の初期研修において、女性を対象とする診察の心得から、診断、治療に至る道筋を、会得することができます。そこで、不妊生殖医学領域、がん生殖医療、生殖遺伝、婦人科良性腫瘍などの各領域における専門的な医療を、目の当たりにして経験することができます。不妊生殖医学領域では、一般不妊治療に加え、高度生殖医療(体外受精、顕微授精、凍結胚移植、精巣組織内精子採取術、着床前胚診断)などの治療を行います。平成元年には札幌初の体外受精児が当科で妊娠した実績を持ちます。

後期研修では、婦人科全般の診断・治療に積極的に取り組む一方、専門的視野を携えた医師を育成することを目的とします。診療内容は、月経・ホルモン異常、不妊症、性感染症、妊娠の診断と治療、子宮筋腫、子宮内膜症および卵巣腫瘍などの疾患等、婦人科全般の内容が含まれています。

これらの疾患に関する研修指導は主に日本生殖医学会生殖医療指導医、日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(腹腔鏡、子宮鏡)が担当します。2009年3月より全国に先駆けて単孔式腹腔鏡下手術を導入し、2010年日本産科婦人科内視鏡学会では学会賞を受賞しています。

また、当院では1年間に約100件の採卵、約100件の胚移植を行っており、泌尿器科医と連携して、男性不妊症の治療にも対応しています。

学会発表などの臨床研究も盛んで、積極的に全国学会発表、講演、論文発表を行っております。

以上、当科は日本産科婦人科学会専門医制度卒後研修指導施設でもあり、様々な婦人科疾患について、学術活動を行いながら専門性を高めた研修をすることが可能です。

婦人科・腫瘍科

婦人科腫瘍は卵巣、子宮体部、子宮頸部に発生する頻度が多くそれぞれ良性腫瘍、境界悪性(または前癌病変)、悪性腫瘍に分かれます。

良性の卵巣腫瘍および子宮筋腫の治療は腹腔下手術で行うことが多く、婦人科・生殖内分泌科と合同で5人の婦人科医により治療にあたっています。詳細な内容は婦人科・生殖内分泌科の要項をご参照ください。

婦人科腫瘍の治療は手術が大きな役割を占め、卵巣癌、子宮体癌では進行癌の場合でも化学療法と手術の組み合わせた治療を行います。子宮頸癌も前癌病変である子宮頸部異形成から子宮頸癌ⅡB期までは手術の対象例となります。

産婦人科の専門医は最短で医師6年目に取得することができますが、次のステップとしてより専門性の高いサブスペシャリティ領域の専門医または認定医を目指すことになります。婦人科・腫瘍科は、婦人科癌に関する専門医である婦人科腫瘍専門医1名、婦人科腹腔鏡手術の認定医である日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定は2名取得しており、専門性の高い指導を行うことができます。

婦人科診療は自分で見つけて、診断して、治療方針を決定して、手術を中心とした治療を行い、手術または必要時化学療法を行った後の患者も自分で見ることとなり、1人の患者を通してほぼすべての治療過程を経験することができるため体験した内容が非常に身につきやすい特徴があります。具体的に診断においては画像診断、病理診断が重要で、まず診断する力をつけるカリキュラムを用意しています。

手術療法についてはまずは良性腫瘍に対する腹腔鏡手術に慣れることから始めます。第一段階は臓器の動かし方、次に腹腔鏡のカメラワークを身につけ、最終的には実際の手術につながる手技を習得してもらいます。悪性腫瘍に関しては悪性腫瘍手術自体を理解するのは難しいですが、手洗いをして入ってもらい悪性腫瘍手術を通して良性腫瘍手術では通常体験することのできないより詳細な骨盤内解剖の理解を深めてもらいます。また、ロボット支援手術は世界では今や鏡視下手術の主流になっており、当科ではロボット支援手術も毎週行っているので、研修医の皆さんがサブスペシャリティ領域の専門医を取得する頃には日本でも主流となっているであろう婦人科ロボット支援手術を学ぶことができます。

良悪性腫瘍、鏡視下手術、開腹手術問わず手術対象症例は全例手術前にカンファレンスを行っているので、参加してもらい手術方針の決定に至る考え方を習得してもらいます。また治療前後の患者を診るために外来診療にも参加してもらいます。

研修医の先生にはとにかくまずは体験してもらって、体験から出てくる疑問について一つ一つ我々の知識と経験を持ってお答えするような研修を考えています。

形成外科

皆さんは「形成外科」と聞いてどのようなことを思い浮かべるでしょうか?

頭、瞼、鼻、耳、唇、顎などを治す頭蓋顎顔面外科、悪性腫瘍切除後の再建外科、顔面骨骨折などの外傷、口唇裂や口蓋裂、多指症などの先天性形態異常の治療などでしょうか。

形成外科とは、「身体に生じた組織の異常や変形、欠損、あるいは整容的な不満足に対して、あらゆる手法や特殊な技術を駆使し、機能のみならず形態的にもより正常に、より美しくすることによって、みなさまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献する、外科系の専門領域(日本形成外科学会HPより)」です。傷をきれいに縫って治すのが基本ですが、治りづらい傷を治したり、傷あとをきれいしたりするのも形成外科です。新生児から高齢者まで、体表面のあらゆる部位を診ていく科でもあります。治療結果が見た目に直結する科だとも言えます。

当院の形成外科では、上記のような様々な疾患の患者さんが来院されます。一方で、最大の特徴として、血管腫・脈管奇形センターを立ち上げており、道内はもちろん、日本全国各地から患者さんが来院され、全国でもトップクラスの治療実績を積み上げております。

形成外科は現在4人体制で診療を行っております。日常の診療のみでなく、症例や手術手技の検討を日々行い、学会発表などの場も多く、形成外科医としてお互い高め合っております。まずはその一員として診療に携わってみてはいかがでしょうか。形成外科を目指す人はもちろん、将来は外科系の診療科を目指す人、あるいは皮膚科や内科系を目指す人でも、「外傷の処置や縫合が上手くなりたい」などなど、是非形成外科を研修してみて下さい。形成外科的縫合を研修することは何科に進もうとも今後の診療に大いに役立つことでしょう。

形成外科スタッフ一同お待ちしております。

眼科

眼科は眼そのものだけでなく、眼瞼や涙道などの付属器、視路や眼球運動に関係する中枢神経など、視機能そのものを扱います。

当科における初期研修では、眼科一般に関しての基本的な診断・治療を習得することを目標としています。その中には細隙灯顕微鏡検査や精密眼底検査、蛍光眼底造影検査、OCTなどによる検査・診察・診断から、網膜光凝固術(レーザー治療)など専門的な判断を要する治療まで含まれます。さらに白内障手術を中心に、硝子体手術、緑内障手術、角膜移植などの手術治療も行っています。

また、後期研修では、眼科専門医を取得すべく、診察・診断・治療と知識をより深めます。また手術も術者として積極的に症例をこなします。

診療体制は常勤医2名体制で行っています。加えて旭川医大からの出張で「角膜専門外来」、「網膜硝子体専門外来」を行っています。マンパワーとしては決して多くはありませんが、逆に多くの患者さん・疾患を診ることによって、検査・治療のプランを立てて実行する能力が身につきます。

眼科は外科系の中でもマイナーな科で、全身的な対処は苦手であるなどの点は否めません。しかし「見る」という視機能に踏み込める唯一の科であり、「マイナー」ではなく「スペシャリスト」の科であると言えます。患者さんの「見えるようになったよ」の一言のために頑張れる視機能の外科=眼科はいかがですか?

泌尿器科

泌尿器科は尿路を扱う専門科ですが、その守備範囲は広く、尿路癌などの腫瘍性疾患、先天性奇形などの小児疾患、排尿障害を起こす神経系の異常、尿路閉塞に伴う腎後性腎不全などなど多種多彩な病態を扱います。

初期研修医が遥かなる医業の習得の過程において、その一時期、泌尿器科で研修することは、その後多くの患者さんとの全人的なお付き合いをする際、必ず役に立ちます。

  • 尿閉の患者さんが救急外来に来たらどうするか?
  • 全身麻酔をかけたけれど尿道留置カテーテルが入らない! 腎癌が見つかったけれど取るべきか?
  • 尿管結石の痛みが取れないときはどうする?

ありとあらゆる臨床の場面で、泌尿器科での経験が生かされます。具体的には、病棟での患者さんの管理、泌尿器科小手術の経験、救急外来での泌尿器科処置の実際などを通して、泌尿器科の真髄の一端に触れてもらいgeneral doctor を目指す研修医を広くサポートします。

泌尿器科後期研修は、泌尿器科に興味ある研修医にさらなる飛躍の場を提供します。膀胱癌に対する膀胱全摘術、腎癌に対する腹腔鏡下腎摘出術など泌尿器科大手術に積極的に参加して頂きます。そのためには北大病院泌尿器科での手術見学もアレンジします。

前立腺肥大症に対するTUR-P などの経尿道的手術の習得を一つの目標とし、泌尿器外科医としての第一歩を踏み出して頂きます。他施設での透析療法の研修も希望により提供できます。

また、当院は日本泌尿器科学会専門医関連教育施設であり、学会発表の機会や論文作成の指導も十分可能です。

麻酔科

当院麻酔科では周術期とくに手術中の患者管理を主体に、外科系各科の手術を年間約3000件担当しています。

1年目の研修では、あまりリスクの高くない症例を指導医と一緒に担当してもらい、静脈路確保、気管内挿管等の気道確保の手技、呼吸循環をはじめとした全身管理、周術期のモニタリング等について学んでもらいます。

2年目の研修では1年目の内容に加えて脊椎麻酔の穿刺等の手技、リスクの高い症例、麻酔管理の困難な症例の周術期管理を指導医と一緒に担当してもらいます。

また、北海道大学病院麻酔科の見学、研修を行うことも可能で、移植医療、小児心臓血管外科等の当院では経験することができない症例の麻酔を経験することもできます。

複雑化した手術医療を安全に行うために、当院では術前診察で患者のリスク評価をしっかりと行い、手術担当科だけでなく、看護師、臨床工学士たちとも協力してチーム医療を実践しています。

放射線診断科

放射線診断科は主に CT、MRI の画像診断を行いその情報を各診療科の担当医に提供することで的確な診断、治療をサポートし、病院全体の医療レベルの向上に寄与する。また、画像誘導下の低侵襲治療(インターベンショナルラジオロジー、IVR)によって低侵襲血管内治療、経皮的直達治療、US、CT、MRI ガイドの生検など種々の病変の治療、侵襲的検査を行う。

1)画像診断

診断レポートを作成し診断と治療に必要な詳細な画像情報を提供することで主治医の正確な診断と治療法の選択をサポートする。また、院内の各種カンファレンスにおいて各科の医師の疑問に答え、画像診断の限界や他の画像診断の可能性などを提言する。

臨床研修では指導医の下でレポーティングシステムを使って CT、MRI のレポートを作成し、基本的な疾患の正確な 読影を通じて疾病を深く理解する。同時に最新の画像診断の限界、画像診断の今後の展望などを学ぶ。

2)IVR(インターベンショナルラジオロジー)

血管系 IVR は腫瘍、血管奇形、出血などの動脈塞栓術、狭窄・閉塞した血管の血管形成術、深部静脈血栓症のフィルター留置、門脈圧亢進症の静脈瘤塞栓術など多岐にわたる。

非血管系IVR は主に腫瘍のアブレーション(ラジオ波焼灼術 RFA、凍結治療)、各種ドレナージおよび US、CT、MRI ガイド下生検である。ラジオ波焼灼術は肺癌、肝癌、腎癌を US またはCT ガイドでニードルを直接穿刺して焼灼する。凍結治療は主に MRI ガイドで腎癌に直接凍結針を穿刺して治療する、極めてユニークかつ低侵襲な治療法だが、道内では当院でしか経験できない治療法である。

血管系、非血管系IVR とも適応基準、禁忌、有効性と合併症について学び、IC の取得を行う。また、実施に際して、患者と術者の被爆低減の基本を学習し、X 線透視、画像ガイドの正しい方法を習得する。

Ⅰ 血管系 IVR

Seldinger 法による動脈穿刺、基本的なカテーテル操作法を習得する。習熟度、期間によっては以下の項目も研修可能である。

  1. 胸腹部、骨盤内、四肢の主要血管の選択的造影。
  2. 症例によってはマイクロカテーテルによる超選択的造影、塞栓術。
Ⅱ 非血管系 IVR
  1. 超音波ガイドによる病変の直接穿刺技術の習得。
  2. 基本的なドレナージ技術の習得とチューブ管理。
  3. 超音波および CT ガイド生検法の習得。
  4. RFA、凍結治療の基本を習得。

IVR に関しては全国的な IVR の研究グループで国内外の多施設共同研究を行い、世界に向けて情報を発信しているJapan Interventional Radiology Study Group (JIVROSG) の参加施設であり、最先端臨床研究の一翼を担っている。研修中は研究に参加し、研究法や結果の解析についても学ぶ。

研修中は画像診断、IVR とも可能な限り多くの学会、研究会に参加し、幅広い知識と技術の習得に努める。

放射線治療科

放射線治療は手術や化学療法と並び、悪性腫瘍に対する三大療法の一つです。手術や化学療法と比較して、対象臓器の限定が無く、根治から緩和まで幅広く対応する点に放射線治療の特徴があります。

当院では多くの科が悪性腫瘍を治療しています。それらの科と協力しながら患者さんにとってBestのがん治療を提供しています。Oncologic emergencyと呼ばれる病態に対しても、必要があれば依頼された当日からの放射線治療を行います。放射線治療のBestを尽くしています。

研修としては、根治照射の適応となる症例においては、放射線のみでの治療ばかりではなく、当院の特徴を活かしたmultimodalityな治療としての化学放射線治療や術後照射についての研修を行います。また、緩和照射では転移性骨腫瘍や転移性脳腫瘍が主な対象となります。緩和照射において重要なポイントは、患者さんの状態を考慮し個別化した治療方針の決定にあります。症状や画像所見、併用される治療法などから放射線治療の治療方針を総合的に判断する研修を行います。

研修可能な放射線治療技術としては以下のものがあります。

  1. 画像誘導放射線治療。特にCone Beam CT (CBCT)を用いた画像誘導放射線治療について。
  2. 定位放射線治療。
  3. 強度変調放射線治療の治療計画の作成について。

他科とのカンファレンスにて治療方針や放射線治療中の患者管理などの重要な事項が決定されます。研修のためにもカンファレンスに参加します。

放射線治療は臓器に限定されず早期例から進行例までの悪性腫瘍を対象としています。悪性腫瘍の治療に関わりたいという方には、将来専門とすることを希望する臓器にかかわらず、放射線治療についての基礎的知識を身につけることは有用だと考えています。

病理診断科

病理診断科は内科・外科をはじめとする全科からの全ての臓器・患者を対象としてとして様々な疾患の確定診断を行っています。具体的には組織診および細胞診・術中迅速診断・病理解剖(剖検)になります。日常の診療業務のほか、各科との院内カンファレンス、院内・院外合同症例検討カンファレンスも定期的に行っています。

現在、当科では、病理専門医2名、検査技師5名(うち細胞検査士5名)で、組織診約7200件、うち迅速診断 約140件、細胞診約5000件(2021年度実績)の診断を行っています。

研修では、研修医自らの手で各科の手術検体の切り出しを行い、標本の鏡検、病理診断レポートの作成(下書き)までの一連の診断業務を体験できます。当院は胃・大腸・食道・肝胆膵の手術症例・消化管ESD症例が豊富なため、将来消化器内科・外科を目指す先生方に特におすすめです。その他の診療科の症例もバランスよく経験することができます。肉眼所見や内視鏡所見、画像所見と組織像の対比をすることは、将来の進む科できっと訳に立つでしょう。もちろん、病理医になりたい方も大歓迎です。